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女友達 第四十二章

   連続官能小説  女友達 (Girlfriend)




      第四十二章

         
           新婚さんごっこ



 
「あんっ! おっ にい ちゃんっ・・・ 」


「 あっ!ああっ! ああ‐ン!」

レイの声が甘い喘ぎ声に変わっていったその時・・・


  〈 プルルルルル・・・プルルルルル・・・ 〉


不意に携帯電話のベルが鳴った、シンジの携帯だった。


   〈 ハッ!〉


レイの体に回していた腕を解きシンジは慌ててテーブルの上に置かれていた

携帯電話を引き寄せ手にとった 。


  〈 ルルルル・・・プルルルルル・・・ 〉


「母さんからだ・・・」


  〈 プルルルルル・・・ プルルルルル・・・プルル 〉


  〈 ピッ 〉

「もしもし  もしもし シンちゃん・・・」

「母さん!」

「ああ良かった! やっと繋がった・・・」

「母さん 今何処にいるの?」

「・・・それがね、まだ新宿なのよ、大変な事になっちゃって」


「ああ、そうみたいだね」


「それでね、今夜は帰れそうにもないからって 

  リョウジ叔父さんが部屋をとってくれてね・・・

   今夜はこっちで泊るわ、だから 心配しないでね

    夕食はどうしたの、もう何か食べた?」


「あっ ああ 今作ってるとこだよ、って言っても 冷奴と目玉焼きだけど」


「ごめんね何にもなくて」


「火を使うと 暑いからこれで充分だよ その代わり アイスは全部食べちゃうよ」


「ごめんね・・・明日は何か美味しいもの作るわね」


「大丈夫、心配要らないよ」



「母さん なんだって?」

レイが小さな声でシンジに尋ねた。



「叔父さんが部屋をとってくれたらしい、泊るって」

携帯を押さえながらシンジが小声で答えた。



「やっぱり・・・」

レイは独り言のように小さく呟いた。



「レイは?」

「あっ ああ 今 玉子を焼いてくれてるよ 変わろうか?」


レイは少し顔をしかめて首を横に振った。


「あっ、お料理してるんなら いいわよ 変わらなくても・・・」

ミサトも レイとはあまり話したくない事が 何となくシンジにも解った。


「明日はどうするの? そのまま仕事?」

シンジが話題を変えた。


「・・・そうね、そうなるかも知れないわね」

「まあ こっちは心配ないから、キャンプ気分でやってるよ」

「・・・ごめんね、じゃあ戸締りと 火の始末だけ お願いね」

「ああ 母さんも気をつけてね、あと 叔父さんに宜しく」

「ええ じゃあ切るわね ごめんね じゃあね おやすみ・・・」

「うん おやすみ 母さん」


   〈 ピッ 〉


「母さん・・・何か 変だった、『 ごめんね 』ばっかり言ってた

      それに 泊る話をすぐに夕食の話に切り替えたし・・・」 


「やっぱり うしろめたいんだよ 私達に」

レイは口を尖らせて 少し怒っている様子である。


「・・・レイ、どうしよう?」

困った事で悩んでいるようなシンジの声に


「どうしたの お兄ちゃん?」

レイが心配そうにシンジの顔を覗き込んだ。


「母さん 泊るって・・・」


「うん だから?」


「今日は帰って来ないんだよ」


「だから 泊るって・・・あっ!」

レイが驚いたような声を上げた、そしてすぐに複雑な表情をした、

嬉しいような、困ったような、そんな表情だ。

ついさっきまでのベッドの上での出来事が頭の中をよぎったのだ




「・・・そうだよ レイと俺 二人っきりなんだぜ 一晩中・・・」

シンジの顔が急にニヤニヤと 笑顔になった。



「お兄ちゃん 今エッチな事考えてたでしょ?」

頬が赤くなっているのが自分でも解るほどだったが

部屋が暗かったのでシンジには気付かれなかった。


「レイは考えなかったのか?」


「考えないよ そんなこと!」

口ではそう言いながら頭の中は『 そんなこと 』でいっぱいだった。

頬だけではなく耳まで赤くなっているのが自分でも解るほどだった。

シンジにその顔を見られるのが恥かしくて 俯き 目を伏せた。



「新婚さんごっこ・・・しようか?」

シンジが真剣な声で尋ねながら レイの腰に腕を回して引き寄せた。



「二人っきりなんだね・・・朝まで」

レイはシンジの首に腕を回し 囁くような小声で続けた。

「お兄ちゃん・・・私 お腹すいた」

その口ぶりはおどけたようで、その表情はニッコリと微笑んでいた。


「はははっ そうだな、先ずは新婚さんみたいに仲良くごはんでも食べるか」

腕を緩めて 少し残念そうにシンジが言った。


「えへっ! 残念でした!」

そう言うと レイは〈 ぺろっ 〉っと舌を出した。


「あとからゆっくり・・なっ!」

「んもーっ お兄ちゃんのエッチィ!」

本当はレイも 『 あとからゆっくり 』と、そう思っていたようだが・・・


レイは食器棚から皿を取り出すとフライパンの目玉焼きを取り分けた。

「玉子 いい感じに出来てるよ、塩コショウでいいんだよね?」


「ああ、豆腐はどうする?生姜?からし?」

「生姜かな? 冷やごはんでいいよね? 

       足りなかったら そうめんでも茹でようか?」


「いや、いいよ 暑いから」

豆腐の皿をテーブルに並べながらシンジが答えた。



テーブルの上に簡単な食事の用意が整った。


「じゃあ 食べようか」

「うん」


いつも 並んで座る テーブルに 初めて 二人向き合って座った

テーブルの上のランタンの光が二人の顔をほんのりと照らしている

ダイニングの壁に二人の大きな影が映っている

光と影だけの、二人だけの世界がそこに在った・・・。



「なんか変だね、やっぱり いつもと違うと・・・」

「ああ そっちに座ろうか?」

「うっ ううん 別にいいよ」

俯いたままレイが答えた。


「どうしたんだ?」

不思議そうにシンジが尋ねた。


「ううん 別に・・・ただ」


「ただ?」


「新婚さんってこんなのかなって・・・」

レイが恥かしそうに答えた。


「恥かしいのか?レイは・・・」


「だって・・・はじめてだもん、こんな・・・」


「こんな?」


「もういいっ、食べよう・・・」


「俺は、俺もちょっと照れるなっ、でも 嬉しいよ お前と・・・」


「私と?」


「もういいっ、食べよう・・・」


「ふふふっ おんなじだねっ!」


「ははっ そうだな」


本当に簡単な食事ではあったが、そんな言葉を交わしながら

嬉しそうに、二人は夕食を食べ始めた。